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「怖いよ、それ。自己中な男だね。」
そう言いながら、妙に納得してしまう。
「稔言ってたぞ。悪びれる様子もなく。」
「何を?」
「本当は好きなくせにかっこつけて、『美咲のことなんてどうでもいい』っていう諒司を茶化したかったって。」
「・・・そう。」
「諒司は最初、他の女でよくね?ってはぐらかしてたらしいんだよ。
それを稔が、美咲のことどうでもいいなら別にいいじゃんって。」
「でもさ・・・結局諒司はその話を飲んだんだから・・・。」
本当に好きなら、そんなことさせないでしょう。
「ここから先は諒司の話な。
お前が振った日、諒司は半べそだった。」
「半べそなんて大袈裟な。」
「大袈裟なんかじゃねーよ。
稔に話を吹っかけられた時、諒司は自分が美咲を好きなのを認めるのが怖かったって。
ずっと美咲にどうにか抵抗して欲しいって思ってたって。
あいつはさ、不器用だけど、今でもあの日のこと後悔してるよ。」
「あの日のこと、諒司は忘れてたんだよ。」
「照れ隠しだろ。」
「そんなの分からないよ。」
「いや、照れ隠しだね。
今でも言うもん。
あの日がなければ一緒に入れたのにって。
あいつお前と渋谷に行くの楽しみにしてたんだよ。」
どうして今更ー・・・
私は今かなり酔ってる。
諒司が今目の前にいたら、私は過ちを犯してしまいそうだ。
「私も・・・渋谷楽しみにしてた。
あのね翔太くん・・・私もずっと後悔してたんだよ。」
二人で過ごした1年間。
やっぱり思い出すのは、ピアノのこと、将棋のこと。
普通のカップルみたいに過ごしてきた時間。
どっちかにほんの少しの勇気があれば、私達は付き合ってたのかもしれない。
「美咲、思い出したくないだろうけど、あの後稔、1人で美咲のところ言ったんだってな。」
「うん。」
「稔は多分、諒司がまともに恋愛し始めたことをよく思ってない。
あいつは諒司を元に戻したかったんだよ。
あの日、稔は『美咲にひどいことするから見に来いよ』って呼び出したらしい。」
色々な辻褄が合った気がした。
「・・・あの2人親友なんじゃなかったの?」
「腐れ縁みたいなもんなんじゃねーの。」
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