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「腐れ縁ね。」
「稔のことは確かにお前を傷つけたかもしれないけど、それなら俺が謝るから、諒司のこと分かってやって。」
あの日も言ってたね、諒司を許してやってって。
「・・・もう半分忘れちゃったよ。」
確かに傷ついたかもしれない。
確かに悲しかったかもしれない。
でも、3年だ。
「諒司は本当にお前が好きで好きで、理解出来ないだろうけど・・・」
私は、なんでか翔太くんの言うことなら信じられる気がした。
「・・・じゃあ私が諒司をまた好きになったとして、晴れて両思いになったとして、二人は付き合うことになったとして・・・。
それって不倫だよ。」
「お前も諒司も、バカでクズなままじゃダメなの?」
何も返せなかった。
それでもいいような気がした。
私達はずっとこうやって、半端なままグダグダしててもいいような気がした。
諒司に会いたかった。
会いたくて仕方がなかった。
「・・・諒司どこで飲んでるの?」
「すぐそこ。
ほらこの道の角にあるバー。」
なんだか笑っちゃう。
私、そこにもタケさんや俊ちゃんと飲みに行ってる。
私のテリトリーに容赦なく入ってくるんだから、諒司は。
「私ー」
私ー何?
「まだ居るよ。
俺、美咲に会いに行くって言ってきたから。
多分あいつお前が来るの待ってるつもりだよ。」
「最低だ、私。」
「最低なのは俺も、諒司も。」
「ねぇ私・・・」
私は次の言葉を言わずに黙った。
私はずるい。
翔太くんに「行ってこい」って言わせたかったんだ。
自分で言ったら、罪が重くなる気がしたから。
翔太くんは、私のことを見て、見透かしたように笑った。
「行ってこいよ。」
「・・・ん、行こうかな。」
「分かる?場所。」
「分かるよ。」
タケさんや俊ちゃんがもしもカウンターに居たらー
翔太くんの声のボリュームが大きかったらー
私はきっと体裁を気にして、行かなかっただろう。
最低だな本当に。
どこまでいっても、私は、私のままだ。
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