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……と、雑談を挟みつつペアワークをこなす間に時間は過ぎて鐘の音と共にお昼休みを迎えた。
「真美、食堂行こうよ」
自分の鞄からお弁当を取りだそうとしていると、名前を呼ばれる。
あまり聞き慣れない声、その主は日野さんだ。
「えっ……あ、あの、私お弁当だし」
また、つい声が上擦る、
それもそう入学してから下の名前だけで呼ばれるのは初めて、真千でさえ私を『和田さん』と呼ぶのだから。
「……?
問題無くない? 他にもいるしさ」
その真千は別の教室で授業を受けていた為にまだ帰って来ない。
「あ、うん……そだね」
「もしかして他に約束あるの?」
「いや、約束はしてないけど」
一瞬、やや気まずそうになる日野さんの顔に私は反射で答えてしまう。
「あ、そう? じゃあ行こう」
「あ……うん」
約束は本当にしていない、いつも私が真千の机に私の机をくっつけてるだけ。
……嘘はついてない、
そう思いつつ、なんだか後ろ髪を引かれるような気持ちで私は教室を後にしたのだった。
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