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ーー気付くと僕は、目の眩むような、眩しいくらいの明るい光の中にいた。
目を凝らすと、窓から柔らかい光が差し込んでいる。
そこはベッドの上だった。腕には点滴が繋がれている。
ベッドの側には、医師と看護婦と、スーツを着た二人の男が居た。若い男と、歳のいった男だ。
「お前が中原タケシ、19歳だな? お前に訊きたい事がある。何の事だか分かるか?」
スーツの若い方の男が何かを見せ言った。
男が見せたのは警察手帳だった。
歳のいった男の方も警察手帳を出した。ーー2人とも刑事らしい。
「ーーはい。」
僕はハッキリしない頭でそう答えた。
ベッドの側で、刑事達と医師が話している声が聞えた。
僕はそれをまるで他人事のように聞いていた。
「先生、今の容態は?」
若い刑事が訊く。
「もう峠は越しました。安定してますし、もう大丈夫でしょう」
「それにしても、本当に男なんですか? 何度見ても小さな少女にしか見えません!?」
「もっときちんと調べてみなければ分かりませんが、男性であるのは確かです。彼は体がまだ未成熟な時に、無理に性転換手術をしたせいで、ホルモンバランスが崩れて成長が止まったようです。しかもちゃんとした医師免許を持つ医師による施術ではないと思われます……。あれは女性器というより、ーーただの穴です」
「穴?」
「はい。あれでは性交渉をしても、性的快楽を感じる事も出来ないでしょう。ただただ苦痛なだけです。物凄く痛い筈です。女性ホルモンの摂取もきちんと行われていないようで、胸は未発達のままです。身長151センチ、体重31キロと多少痩せすぎではありますか、胸の発達も無い所為で、見た目は完全に小学校高学年の少女です」
「ーー確かに、そんな風にしか見えんな。まるで子供だ。年齢や男だと聞いても、簡単には受け入れられん」
2人の話を側で聞いていた老刑事が、思わず呟くように言う。
「もしかするとぉ……」
医師はさらに言い難そうに言う。
「もしかすると?」
「施術が未熟と言うより、そういう目的の為に、故意にそう造ったのかも知れません」
「そういう目的?」
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