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「はい、そうですね。……でも本当にこんな子が、あんな恐ろしい犯罪を犯したんですかね? 本当にそうなら、拘束具なんかは要らないんですか?」
「大分弱ってるし、大の男が二人も居れば大丈夫だろう。お前、コイツに負けるのか?」
「いや、さすがにそれはーー」
老刑事はもう一度、少女(僕)の方を向いて
「不謹慎だが、本当に美しいな。まるで生きている人形だ。先生の推測も一概に違うとは言えんのかも知れんな」
厳しい言葉を発しながらも、やはり自分でも言ったように、声に同情の色は隠せなかった。
直ぐ近くで話しているのに、刑事達の声は僕には遥か遠くの会話のように、ずっと聞えていた。
そうか、そう言えば走馬灯は死ぬ前に見る物だ。
てっきり死んだと思っていたが、実はまだあの時に、僕は完全には死んで居なかったようだ。自らを死神だと言ったあの子は、予定が狂ったと言っていたが、こういう事か。
死する筈だった僕の肉体は、何の因果か、蘇生したのだ。
死んだのは結子の人格だけで、1人肉体に残された僕は、これからこの世で罪を償わされる訳か。どうせ僕の中の結子の人格も消滅しているから、多重人格も認められず、まず死刑は免れないだろう。タケシとして僕には死刑が下されるのだ。まあ、実際殺して来たのは僕だ。
遠回りするが、地獄には着くとは、こういう事かーー。
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