【最終章】

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僕は刑事の問いには答えなかった。 もう結子は居ないし、説明しても理解できる訳もないだろうし、それより何より上手く説明できる自信が無い。 それにしても、僕に結子の父親を殺した以前の記憶なんて無い筈なのに、なんであの2人の事は僅かにでも覚えていたのだろう? 結子の記憶の一部が、少しだけ僕の中に残っていたのだろうか? それとも、見舞いに来た時に意識の無い僕に、何か彼らが話たのだろうか? その辺は、今となっては知る由も無いな。あの死神の子は、主人格の事は分かると言っていたから、やはり結子の記憶が僕に僅かに紛れていたのかも知れない。 「吉田もお前か? どうして殺した」 「吉田の上司の間宮と、結子が最初に暮らしていたあの男も、宗教キチガイの頭のおかしい奴だったから僕が殺したんだ」 ーーもうこの時には、僕は大まかな今までの記憶を思い出していた。 「貸しコンテナの、切断された腐乱死体が間宮か?」 「そうだよ」 「……。」 見た目からは信じられない淡々とした殺人の告白に、若い刑事は思わず怯む。 だが、僕はお構いなしに話を続けた。 「間宮が居なくなった結子を、暫くは吉田が面倒を見てくれてたんだけど、途中から結子に恋愛感情を抱くようになってね。ある日、結子を襲ったから僕がボコッて、ーー見せてやったんだよ?」 「何をだ?」 「間宮がどうなったかをさ。あのコンテナに連れて行って、お前もこうなるか? ってさ。バラバラの間宮を見せてやったのさ。まあでも、ほら、僕らこんなだろ? だから、あの時はまだ吉田は殺さずにしばらく利用しようと思ったんだ。いずれは殺す気だったけどね。その後も、あいつは間抜けな奴だったから、脅して結子の身の回りの世話をさせてたよ。でも、あいつは裏切って警察に通報したんだ」 僕は面倒臭かったし、半分ヤケクソだったから、多重人格の事を説明せずに刑事にそのままを喋った。
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