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ね、分かった?
実はね、この物語は《結子の新しい世界への旅立ち》の物語と、
あなたの《結子との決別》の物語の二部作では無いのよ。
それに《アタシの誕生》という物語の、三部作だったのよ。
ーー私が三人目。
合歓子よ、よろしく新しい結子。
さあ代わって、最凶の私とーー
そう声が言い終わると同時に、僕の意識は消えた。
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* * * * * *
西新宿中央病院の病室に、甲高い看護婦の悲鳴と、こもった破裂音が3つ響いた。
なんだ? どうした? と患者達は集まり、悲鳴の聞えた病室に入ろうとしたが、部屋の扉が開かなかった。
病室のドアに鍵なんて無いから、鍵が掛かっている訳ではない。
ドアの後に何かが引っ掛かっているようだった。
1人用の個室で、その病室のネームプレートには『中原タケシ』と書かれていた。
暫くするとドアが開き、必死の形相の看護婦が1人出て来て言った。
「患者の中原タケシさんが、刑事さんから銃を奪い発砲しました! 中原さんはその後、自殺しました! 私は警察に連絡して来ますんで、危険ですから皆さんは、病室には絶対に入らないでください!! 絶対にです!! 分かりましたねっ!?」
看護婦はそのまま廊下を走り、警察に電話をしに向った。
患者達が恐る恐るドアから病室を覗くと、そこはまさに血の海だった。
地獄の様だった。
血塗れのスーツの男2人と、医師と、患者衣を着た患者が1人倒れていた。
皆息を呑み、その凄惨さに固まった。
そんな中、廊下を走る看護婦の後姿を見ていた患者の1人が言った。
「見たか? あの看護婦さん、凄げえ可愛かったな」
それに応えるように、別の患者達が口々に言った。
皆、長く入院などしていて、顔見知りなのだろう。
「何言ってんだっ! こんな時にーー。でも、一瞬しか顔は見えなかったけど、確かに凄え可愛かったな?」
「でも、この病院に、あんな子居たっけ? あんな子、見たら絶対忘れねえだろ? 始めて見た顔だ」
「あれ? あの看護婦さんも、足に怪我をしたのか? 片足が少しだけおかしいけど?」
「それにしても、やけに小さいな。まるで子供みたいだな?」
おしまいノシノシ
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