【序章】

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教えられた新宿某所に在る築34年の安アパートに警官逹が着く。 元々白かったのであろうアパートの壁は、経年劣化でねずみ色にくすんでいた。歩くとカンカンなる錆びた赤い鉄板の階段を上ると、そこには教えられた部屋があった。部屋の鍵は開いていて、部屋のドアを開けると、すぐに警官逹の目に入ったのは倒れている人の足だった。ドアを開けてすぐにキッチンがあり、そこを突っ切った向こうに部屋がある。その部屋の入り口から人の足が見えた。室内には首にベルトを巻かれた男が倒れていた。今まで半信半疑でやる気の見えなかった警官達だが、それを見て急に現場は色めき立つ。応援が呼ばれ、検視のための鑑識も呼ばれた。 殺人事件とあって、警視庁捜査一課の刑事達がやって来た。男はその場で死亡が確認された。鑑識によると、死後数時間というところだった。そして警官達は、現場で死体以外に驚くべきものを発見していた。それは少女だった。痩せた小学生くらいの小さな少女が一人、昏睡状態で倒れていたのだ。 その為に、Aに付いては一旦保留にされ、急いで西新宿中央病院にその少女が運ばれた。そしてそんまま、集中治療室に入れられる事になった。少女には誰かと争ったような擦過傷が僅かにあったが、倒れていた直接の原因は外傷による物ではなかった。症状からすると何らかの薬物が飲まされている可能性が高く、すぐ胃の洗浄が行われた。少女は、まるで人形のように美しく軽く小さかった。倒れて死んでいた男がAかと思われたが、見た目が聞かされていた年齢より、随分と上に見えた。少なくともとうに成人は迎えているだろう。
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