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体が揺れる。
頭が乗り物酔いでもしたかのように気持ち悪くなるのとは裏腹にスッキリと靄が消える感覚が走った。
「いつまで寝てるつもりだ。沙弥」
......軽くなった頭に低く深く浸透するこの声は、毎朝聞いているやさしい声。
「ん....翔...今何時... ?」
沙弥のかすれた声が部屋に響くと、翔は揺する腕を彼女から離した。
そして、その瞬間.........
パーン....
静かな部屋に響く沙弥の頭をスリッパで叩く音。
「さっきから何回起こしてやってると思ってんだ!起きろ!クソ姉貴!!」
その台詞に沙弥はゆっくりと起き上がり....
パーン....
彼女はベッド脇にあった自身のスリッパで殴り返したのだ。
「はい!?何がクソ姉貴!!だ!!バカ弟!!」
.........昔からこの兄弟は性格が似ていると、言われ続けていたが、彼らは成長するにつれて似すぎてる故のケンカが増えていった。
しかし、やはりこのケンカは、誰かが止めないと止まらないのだが、このケンカをほぼ毎回止める人物が存在した。
パタパタとフローリングを歩く音に二人は一瞬目を合わせ沙弥の部屋のドアを眺めた。
ノブを回し、扉を開けた足音の主はひょこっと顔だけを覗かせた。
「仲良しさんいいなー、真弥も交ぜて?」
首をコテンと傾ければ沙弥は一瞬のうちに近づき彼女の頭を撫でた。
このすぐ手を出す二人とは対照的に柔らかく、全てを包み込むような雰囲気を持った少女。
この子こそがこのクソみたいな....おっと、失言.......この永遠とも思われるケンカを止めるスペシャリストだ。
美しい黒髪を背中まで伸ばした、黙っていればおしとやかな沙弥。
天性の茶髪を首にかからない程度にし、イケメンに分類されるモデルの翔。
沙弥と同じく黒髪を背中まで伸ばし、見た目どおりのおしとやかな真弥。
そしてこの三人の関係は....
誕生日が同じく、兄弟......三つ子なのだ。
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