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「あのね、翔。」
この異様な沈黙を破ったのは真弥だった。
翔は、じとーっと、沙弥を見ることを止め、真弥にゆっくりと視線を移した。
「鍋がね....」
その言葉を遮るように翔は部屋を飛び出した。
その翔を追うように小走りで階段をかけ下りる沙弥と、おっとりと、ゆっくりと最後を歩く真弥。
三つ子の家は火事で無くならなくてすんだらしい.....
まぁ、ぼやの騒ぎが済み、ゆっくりとソファーで三人が並んで座った。
「翔、今日私、夜帰ってこないから...」
眠たげに目を擦りながら真弥は翔に伝えるとあぁと、小さく彼は反応した。
なぜ翔に言うかって?
翔はこの家の母親みたいなものだ。
数年前に母親を無くしてから唯一家事ができる翔はこの家の家事をしている。
「翔~、今日仕事は~?」
ソファーのしたの隙間にあるお菓子が入った箱を漁りながら沙弥は翔に問うと、辞めた、と小さく言われた。
「へぇ、.....は?ん?....んん!?」
驚きのあまり手に持っていたポテチの袋を彼女は潰して、中身までもを砕いたのだ。
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