第1章

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二男が年長組になり、父兄同伴の遠足バスのガイドは元京急の同僚、他社のバスに便乗する姿に驚いていると 「バイトなの。ガイド料も最高、貴女もやったら」「まさか?もう十年も経つのよ」この時は微塵も考えていなか ったが!」 平和で平凡な幸せを自ら脱皮させるもう一人の人間がいた事など知るよしも無い、京急時代の過去の栄光と情 熱は再び熱く燃え上っていった。 時は高度成長の波に乗って人生は大きく変わっていった。 その頃、長男は大学進学を諦めて、両親を結んだ縁ある京急への入社を果たし、夫と共に喜んでいた。「車掌乗務 のアナウンスが爽やか」お客さんの投票により「爽やか賞」を頂いた時わが子に昔の自分の姿を重ねた。 そして二十二歳の四月、長男は美しい花嫁との結婚式を控えていたその直前だった。愛息の晴れ姿を見ない まま、夫は三十二年九ヶ月間の警察官勤務中に頂いた、数々の賞与と、表彰状、美しい三浦三崎の思 い出を胸に抱き遠い彼方に旅立ってしまった。 天国のあなたへ 前略。三二年前(昭和五十九年三月二十日)貴方は横浜の我が家からあの日、五百人(交通整理出動)「警察関係、京急関係」の弔問客に見送られ突然この世から去って行きましたね。 天国はいかがですか!大好きなお兄さん、弟の清さんとも会えましたか?法事の翌日ご無沙汰していた懐かしい貴方の故郷潮来へ四世帯で行きました。立派な先祖のお墓参りと、新装成った大邸宅の実家に寄り、姪の美津子ちゃん夫婦の暖かいオモテナシを受けて、三十キロのお米を頂戴して感動しました。半世紀の遠い昔、貴方と私のDNAは四世を結ぶ事が出来たのですが、お爺ちゃんとして愛しい孫達に会えなかったのが残念で悔いています。そこで我が家族十二人の構成を紹介します。 貴方が授けてくれた二人の息子。長男は勤続三十六年、今京急の本社勤務です。 私達の孫は四人の内の、初孫は私が四十八歳の時誕生して早や三十歳なり、仕事は幼い頃から好きだった車関係に従事し独身を謳歌しています。 唯一の孫娘二十八歳は、建設関係の頼もしい男性との間に可愛い私達の曾孫が二人、来年小学校一年生に入学する男の子は利発でイケメン、貴方の若い頃の写真とよく似ています。年子の女の子は愛嬌があって丸顔美人は私ソックリです。
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