第1章

8/13
前へ
/13ページ
次へ
「署の連中が男の人と一緒だったと言っていたので」さすが警察・・・「いえ友達の事でしたら、もう別に関係ないから」「それじゃ、これから暇の時は署に電話を下さいませんか?」その言葉は嬉しかったが、まだその時心の中で失恋の余韻が・・・それにしても思い出多い同じスワンでの交際申し込みに戸惑った。 「皆さんとは、いくら顔馴染みでも、私用での呼び出しは、悪いわ」当時の三崎警察署は三崎港岸壁にあり二階が独身寮だった。後輩の松ちゃん「彼が留守の時は僕が出ますから、遠慮しないで電話をかけて下さい」 それから二ヶ月程妙子は電話を一度もかけなかった。 爽やかな初秋、三崎警察署員の箱根日帰り旅行は二班に分かれ、最初のグループのガイドは妙子、バックオーライ、京急バス配車。その時だった。 「アッ、今日は生(なま)さん(なま:彼のイニシャル)の慰安会だぁ」若い署員の声。「皆様お早うございます。本日は当社京急バスをご利用頂きありが・・・」早くも野次が飛び署員の歓声、車内は全員顔見知りの素敵なおまわりさん達で、この日のバス車内は、家族的な雰囲気で特別だった。心温かい野次と爆笑の渦の中を得意の箱根コースも途切れがち、その歓喜の中でなんと話題に晒されたのは、彼とガイドだった。この時の京急観光バスが三崎警察署員と組んで、見事に世紀の恋へとスタートさせた。 交通キャンペーンでの出会い。小さな恋の炎が今バスの中で彼の同僚達の声援攻撃によって大きな炎となって燃え盛ったこの日、二人の運命を固く結んでくれた。当時三浦市の人口は三万五千人の町、お互い有名人の為に、手を繋ぐどころか一緒には歩けない状態だった。 妙子も二泊三泊と長距離コースが多くなっていたが、時間を見つけ二人のデート場所は女子寮の裏山、門限五分前まで会える場所だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加