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「…おーい、おっさーん？」
呼びかけてみたが返事はない。
辺りをキョロキョロと見回し誰もいないのを確認すると、恐る恐る噴水を覗き、スーツの袖口を捲ってそっと水の中に手を入れた。
底までの深さは肘くらい。やはり普通の噴水だ。
「冷てぇ…おっさん冷てぇよ…って言うかあれって何だよ…」
独り呟いてみてもやはり返事はない。虚しさが込み上げ溜め息をついた。
一体何だったんだ？夢か？幻か？
余りの忙しさにとうとう病んだか？いや、病んではいない。確かに見たんだ、俺はおっさんを…
「ヘル…ヘル、ヘルメット…？いや違うな…ヘルメ…、はぁ…どうでもいいか…」
どっと疲れが出た。帰ろう、今夜は冷える…いや、スーツが濡れてるからか…
俺はクリーニング代とおっさんの名前を思い出すのを諦めて、とぼとぼと家路に就いた。
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