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今日 俺は"親知らず"を抜くために歯医者に来ている
唯一の肉親である父はこのことを知らない
まさに「親知らず」、なんちって
そんなくだらないことを考えながら 少し混み合った昼過ぎの歯医者のソファに座り自分の番を待つ
「不知(シラズ)さーん、お待たせしました。こちらへどうぞー」
綺麗なお姉さんに呼ばれ、診察台へと向かう
こんな綺麗なお姉さんに口を大きく開けたマヌケな顔を見られるのは少々恥ずかしい
俺はおずおずと機械が横に備わった椅子に座る
「少しお待ちくださいねー」
そう言うとお姉さんはどこかの部屋に入っていった
自分の手をぼーっと見ながらお姉さんを待つ
「こんにちは、今日は親知らずを抜くということでしたよね」
急に上から降ってきた声に驚いて顔を上げる
そこには マスクをはめて、白い白衣を着た父の姿があった
俺はまだ治療をしている訳でもないのに、
ぽっかり口を開けていた
父は俺が 親知らずを抜くことを知っていた
一方 俺は父が知ってるとも知らず、その上
父の仕事場すら知らなかった
本当の"親知らず"は………俺か…………
今日、父に親知らずを抜いてもらう俺
久しぶりに二人で話をしよう
そう決意した5月2日の歯医者の日
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