円卓の巻

円卓の巻（後槻・流出子・冬扇・風狐）　2003.03～2004.03

１　新しき円卓かこむ空の下　　　　　　　　　　後槻
２　星呑む水面紅蓮を映し　　　　　　　　　　　流出子
３　漂流はつづく無人の難破船　　　　　　　　　冬扇
４　濡れ羽色した道の向こうは　　　　　　　　　風弧
５　未来から月へ向かって散る廃墟　　　　　　　流出子
６　栞はさんでしばしたたずむ　　　　　　　　　後槻
７　雪を切る手元見ているいつまでか　　　　　　風弧
８　六十年後の獅子舞の笛　　　　　　　　　　　冬扇
９　軽々と風をつつんでオーガンジー　　　　　　後槻
10　一斤 鶸色 楝（おうち） GO-GO！　　　　　流出子
11　おめざには甘納豆をひとつかみ　　　　　　　冬扇
12　欄間の梅が零れこぼるる　　　　　　　　　　風弧
13　1/2／2が0.25思考（註１）　　　　　　　　 流出子
14　順まつ新聞点々々と　　　　　　　　　　　　後槻
15　鉄塔の列をたどっていやはてに　　　　　　　風弧
16　月の破片が煌く聖地　　　　　　　　　　　　冬扇
17　睡蓮の葉かげをつつく金魚の子　　　　　　　後槻
18　掴むその手に虹色移り　　　　　　　　　　　流出子
19　貫乳の空をあふれて秋の水　　　　　　　　　冬扇
20　映して凪ぐや今日の砂漠は　　　　　　　　　風弧
21　ぼうびゅうと頬とアイスを駆け抜ける　　　　流出子
22　巻き尾の友に道を頼んで　　　　　　　　　　後槻
23　ああ俺は国家権力の猫になる　　　　　　　　風弧
24　誰もいわれを知らぬ銅像　　　　　　　　　　冬扇　
25　気配して座敷童子の古ぼうき　　　　　　　　後槻
26　たちまち伸びて天まで届き　　　　　　　　　流出子
27　金星（ｳｪﾇｽ）より火星（ﾏﾙｽ）明るく秋暑し　 冬扇
28　変化の時はあやまたず月　　　　　　　　　　風弧
29　海面下１メートルを覆う影　　　　　　　　　流出子
30　サナトリウムへ鮮魚が届く　　　　　　　　　後槻
31　ほころびる花と顔（かんばせ）そして嘘　　　風弧
32　噂話にミル回しつつ　　　　　　　　　　　　冬扇
33　鼻歌もうろ覚えにて散歩道　　　　　　　　　後槻
34　蝋人形の頬が透けゆく　　　　　　　　　　　流出子
35　去る者は去らせ桜の下黒　　　　　　　　　　冬扇し
36　座せばすなわちひびわれの空　　　　　　　　風弧

註１：1/2／2＝いちわるにわるに