第1章

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目が覚めると真っ暗な場所だった。自分の手先すら見えないほどの暗闇。自分がどうしてこんなところにいるのかはっきりと覚えていない。 確か俺の部屋でビールとスーパーで買った惣菜でささやかな祝杯を挙げていたはずだったのだが。 記憶を呼び起こしているとこめかみに痛みが走る。頭もなんだかぼんやりとしていた。 すぐ近くで何かが動く気配がした。 それはゆっくりと動いた後辺りをうかがっているようだった。 「誰かいるの?」 聞き覚えのある声。 「由紀」 声の主恋人の由紀に声をかける。 「秋也。そこにいるの?」 「ああ。いるすぐ側だ」 だんだん目が暗闇に慣れてきたのか1メートルほど先に人の姿がぼんやりと確認できた。 由紀の場所に近づいて手を取る。 「よかった。一体どうなってるの? ここはどこ?」 「それは俺にも分からない」 なるべく由紀が不安にならないようにと手を強く握る。由紀も強く握り返してきた。
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