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少しでも何か情報がないかと目を凝らすと俺たちの数メートル先に人影があるのが見えた。どうやら座っているらしくこちらに視線を送っているのが感覚でわかる。
「誰だ」
「俺だよ秋也」
また聞き覚えのある声だった。
「有馬か」
大学生の時からの友人の声で少しほっとする。
「あんまりほっとするなよ。状況は何一つ良くはなっていないんだから」
自分の心の中を読まれたようで少し恥ずかしくなる。そうだしっかりしなければ。由紀もいるのだ。
「今、俺たちがどうしてここにいるのか分かるか?」
「いや、はっきりは分からない。ただ、嫌な予感はしている」
「どういうことだ」
「目が覚める前の記憶はあるか?」
「確か部屋で三人でビールを飲んでいた気がする」
「そうだな。それでその後は?」
その後の記憶を思い出そうとするが記憶があいまいではっきりと思い出せない。沈黙を答えと受け取ったのだろう有馬が話を続ける。
「俺が最後に覚えているのは秋也の部屋の廊下側の窓から何かが投げ入れられてそこから煙がでてきたことだ」
「マジかよ」
思わずつぶやいていた。由紀も不安になったらしく服の袖を強く握ってきた。
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