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実際、キスしているシーンを見ただけだ。だが、拓也は何を勘違いしたのか、次々に浮気の自白をしていく。必死に謝る拓也。どんどん興味が失せてくる。私の見る目が無かったのだ。私は大きくため息をついてから、必死に何かを言い続けている拓也に笑顔を見せ、大きく息を吸った。
「そんなっ、貴方のこと信じていたのに! 酷い! 浮気者!」
一際大きい声を出し、私は携帯の録音機能を止めた。
「今までの言葉、全部録音させてもらったからね。これを私とアンタの友人に聞かせたくないなら、今後一切私に近づかないで」
背後から、私を引き留めようとする拓也の声。私はそれを無視し、歩きだした。
品川駅は、帰宅する人らでごった返している。いつもなら、ストレスに感じる人ごみも、今日は心地よいくらいだ。すでに拓也の声は、聞こえなくなった。
「はぁ、スッキリ」
鞄から舟券を出す。あの時購入した舟券は普通に外れていた。拓也にあげるはずだった一万円、惜しくもない。
「良い厄落としを有難う、平和島」
――私はそう呟いて、舟券をゴミ箱に破り捨てた。
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