第2節 ミツキ・カケルの初期ステータス

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おかしい。 改めて自分の状況を振り返る。 神様女神様の「間違えて殺しちゃったから異世界で生き返らせるねてへぺろ」みたいな王道シナリオがあるわけでもなく、事前連絡どころか事後報告すらない転生。 秀でた力どころか魔力はゼロだという。それはつまりこのファンタジー世界で魔法が使えないということであり。 さらにずぶ濡れという状態異常スタートと、なににも恵まれていないのだ。 最後は自身の行いによるものではあるが。 だが、人によっては経験を積む(レベルを上げる)ことで魔法が使えるようになる人もいるという。今はこれにかける他...ないか。 「...カケルさん、今晩の宿は決まってるんですか?」 フィリアに聞かれ、まるで追い討ちのごとく避けていた課題に唐突に直面したのを感じる。 カケルの現時点での最大の問題。それは言語が読めないことでも魔力がないことでもなく、衣食住の確立ができていないことだ。 もし、転生モノのラノベでありがちなゲームステータス画面が目の前に表示されたなら、きっとこんな感じだ。 ◆名前:ミツキ・カケル ◆所持金:ゼロ ◆魔力:ゼロ ◆属性:なし ◆拠点:なし(宿にすら泊まれない) ◆備考:読み書き不可 あれ、目からしょっぱい液体が。 「もし決められてないなら、私の家に来ませんか?ご飯もご用意できますし。」 前を歩いていたフィリアが振り返りながら提案する。 「すごく有り難い申し出だけど見ず知らずの人のためにそこまでしてもらうとさすがに悪いような... 」 「いいんです、私たちもう他人じゃないですし」 どこか悲しげな表情にも見えるフィリアの笑顔に戸惑いながらも、寝る場所のないカケルにとって断る理由もなく、提案を承諾した。 もう、この人しかいない。 そうフィリアも決断していた。
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