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日が暮れかかり、中央の大通りを街頭が照らし始める。
フィリアに連れられ大通りを下りながら幻想的な黄昏の街に目を奪われていた。
よく見ると電球の代わりに拳サイズの結晶石が光を放っている。科学よりも魔法が発達した世界なのだと改めて認識させられた。
「このあたりは魔光石もしっかりと整備されていて、夜はもっと綺麗なんです。」
先導しながらフィリアが話しかけてくる。
見知らぬ単語が混じっていたが、幻想的な街頭のイルミネーションを眺めながら相槌をうち、そうこうしているうちに二人は城門を潜り抜けた。
「あれ、ここって昼に話してた…」
「はい、内城壁の城門です。私の家、いまスラム街の方なので…。」
気まずそうにフィリアが外側を指さす。
考えてみれば、中央広場から南に下っている時点で住宅地区から遠ざかっていたことに気が付くのだった。
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ーーしばらく先導されるままに歩きながら周りを観察する。
別にスラム街だからといって偏見はないのだが、内城門をくぐった先は思ったほど廃れてはいなかった。
大通り同様に街頭が並び、小さな店が両脇に連なっている。確かに先ほどのようなバカでかい建物は見られないが、それを除けば十分に繁栄できていると言えそうだ。
「ここは他の町の方々や貴族の方々が通られる道ですからね。スラム街と呼ばれる地域は大通りから少し離れます。」
思ったことを口にするとフィリアが指差しながら答える。
確かにそれもそうか。などと思いつつ彼女のあとに続いて大通りから外れ脇道を通っていく。
王城前と違い、ここでは居住地区や行商地区、ギルドの勢力などがまばらに点在しているらしい。
なんだ、スラム街というからどれほどのものかと思ったけど、あまり変わらないじゃないか。
そう思いながら歩いて15分ほどして、先ほどまでの賑わいが嘘のように、薄汚れた壁が連なる区画へと足を踏み入れた。
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