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「な…んで……フィリ、ア」
背中の痛みを堪えながら起き上がろうと膝をつく。
「ごめんなさい」
そう呟く彼女の他に、部屋には30人ほどの柄の悪そうな男達が各々壁に寄りかかっていたことに、灯された明かりでようやく気づく。
全員がニヤニヤと下劣に笑みを浮かべている中、中心でふんぞり返っていた大男が口を開いた。
「おいフィリア、こいつは奴隷商品として欠陥はないんだろうなァ?」
「....はい。国外の村から本日王都にあがってきたばかりです。知人はおろか知識も魔力も持ちません。」
「ほう、ソイツは上物だ。」
ニヤリと、まるで欲しい玩具を買ってもらった子供のように、はたまた悪巧みに成功した詐欺師のように男の口角があがる。
「ッ、奴隷...って言ったのか…」
「そうだ、お前はこれから俺ら奴隷商の目玉商品として高値で売られるわけさァ。女の尻にホイホイついてったのが運の尽きだったなァ?」
親玉と思われる大型の男がそう言い放つと、部下らしき一人が男に鉄製の輪を丁寧に渡した。
「田舎育ちじゃあ見るのも初めてかァ?これは隷属の首輪ってんだ。少し値がはるが、つけられた者に絶対服従って代物だ。んなわけで買い手がつくまでお前も大人しく俺の所有物になってもらうぜェ?」
高々と、低俗な悪役そのもののような高笑いをしながら首輪を片手に近付いてくる。
焦りと拒絶に駆り立てられ起き上がろうとするも、背中に走る激痛がそれを許してはくれない。
「...諦めてください。氷魔法が直撃しているんです、背骨かあばら骨ぐらいは折れています。」
悲しげな表情を浮かべながら促すフィリアの首に嵌められた隷属の首輪がカチャリと音を立てる。
彼女の言うことは本当なのだろう。例えようのない鈍い痛みが体の内部を抉るように全身を襲う。
痛い...くそ、こんなに痛いものなのか...。
全身に広がる痛みと脱力感に折れそうになったその時、自分の体に異変を感じた。
<聖スキル:自動小回復を獲得します。>
<闇スキル:痛覚軽減、獲得。>
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