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今までに経験したことのない浮遊感に戸惑いを覚える。
だが、今は目の前の状況から逃げ延びることが最優先と、体に鞭を打ち、徐々に痛みが退いていく体でよろめきながら立ち上がった。
「ほう。おいフィリア、こいつを大人しくしろ。」
「....はい。」
フィリアが命令に忠実に、詠唱しながら魔力を練り始めた。外界がその影響を受け、一帯の温度が下がるのを感じる。その的が自分でなければ、初めて見る魔法に感動していただろうに...
「アイシクル、ブリザード...!」
彼女の差し出した手のひらから氷塊がいくつも形成され、勢いよくカケル目掛けて射出される。ただでさえ立ち上がるのがやっとのカケルにとって、5mほどの距離から放たれたそれを回避する方法を持ち合わせてはいなかった。
直撃に備えて反射的に目を瞑る。
......『『解析完了』』
<闇スキル:カウンターを獲得。発動。>
<聖スキル:氷耐性を獲得します。>
直後、離れた別々の位置で立て続けに破壊音を鳴り響いた。
時間にしておよそ数秒、痛みが来ないことに疑問を感じおそるおそる目を開け、目の前の光景に唖然とする。
視界に広がったのは、疎らに倒壊した屋敷の壁と、その衝撃に巻き込まれたのであろう数人の賊の横たわった姿だった。
「なにがどうなって..」
<闇スキル:オートカウンターを獲得。>
いよいよ無視できない自身の異変に、半信半疑ながらも頭をフル回転させて状況を把握しようとする。
これが...女神様からの恩恵?
冷や汗を滴ながら訝しげに自分の手を眺める。
考察している暇はない、うまくこれを使わない限り、待っているのは死であることを理解する。
「...嘗めた真似してくれるじゃねーか」
脇腹あたりの装備が破損した大男がゆらりと構えをとると、周りをパキパキと音をたてながら氷塊が形成されていく。
「どういうカラクリか知らねーが、あのメス犬を騙して潜入したんならてめぇ、王国の犬だなァ?」
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