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...っていやいやいやいや!
落ち着いて、冷静になるんだ、これが現実なわけないじゃないか!
ベンチの上であたふたと転げ回っていた自身を落ち着かせ、大きく深呼吸する。
確かにアニメもゲームもファンタジーなら「大」がつくほど好きだが、さすがに現実との見境がなくなるほどではない、と信じたい。
...夢だ。起きよう。
そう決心し、「ぐぬぬ」と力みながら閉じた瞳をゆっくりと開いてみる。が、噴水広場から情景が変わる様子は微塵もない。
「それなら」と強く念じてみたりさらに強く頬をつねってみたり、終いには噴水に頭を突っ込んでみたりと試行錯誤するも、状況はなにも変わらなかった。
...これはもう、認めざるを得ないのかもしれない。
髪から水滴が滴り落ちながらも、再びベンチに腰がける。
時間にして5分程度の足掻きだったが、あっさりと現実を受け入れるにはそれなりの理由があった。
そう、あのとき確かに僕は「死んだ」はずなのだから。
「異世界転生…ってやつなんだよな、きっと」
口に出して言葉の意味を噛み締める。
異世界、か。考えてみればそんなに悲観的になることでもないのかもしれない。むしろ、前世の記憶を引き継いだまま新たな人生がやりなおせるのは、数多の輪廻の中でも特殊な事例なのではなかろうか。
前世に置いてきてしまった家族は心配だが、気持ちを切り替えこのファンタジーな世界で逞しく生きていこうじゃないか!
「よーーっし!」
と自分に喝を入れながら勢いよく立ち上がったと同時に、体が冷えた反動か、盛大なくしゃみが広場にこだました。
「さ、さすがに噴水に突っ込んだのはやりすぎたか?」
せっかくの転生がびしょ濡れの状態異常スタートなのはよろしくない。
というより、これが異世界転生モノのラノベやアニメなら転生前に女神様と対話したり、転生後にチート級の能力が与えられるのが王道のはず。...そのどちらも記憶にないのだが。
「あの…よければ、これ使いますか?」
濡れた冷たさに肩を抱きながらそんなことを思っていた矢先、透き通った声と共にハンカチが目の前に差し出されていた。驚きながらも咄嗟に見上げた先にいたのは、黒髪を肩まで伸ばした女の子、いや美少女だった。
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