第1章

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ー日曜日の真夜中ー 私、トイレの花子がこの旧校舎に配属されて二年程経ちました。二年も経ちましたが私の後に来た新人はたった一人です、『人』という単位を用いるのが正しいのか甚だ疑問ではあるのですが。そのため、未だ若手の私が、今宵も始まる音楽室での定例会議の書記を勤めています。議題は……。 『人間に勝つためには』 勝つため、という言葉を遣うとまるで私たちが負け越しているように聞こえるがそうではない、議長兼リーダーの二宮金次郎さんはいつもそう息巻いてからこの会議を始めます。つまるところ、議題もいつも通りということです。 二宮君は否定していますが、私たち確かに連敗中です。あっ、二宮君とは二宮金次郎さんのあだ名、なんでも今をときめくトップアイドルのメンバーの方と同じみたいです。流行には疎いので詳細は知りませんが配属初日にそう呼ぶように教育されました。 話を戻しましょう。私たちは何を隠そう、絶賛連敗中です。勝ち負けの基準は定かではないですが、勝っていないことは確かです。 「花ちゃん、話聞いてる?」 「聞いてません」 「相変わらず強情だね……」 二宮君が話し掛けてきたから正直に答えたのに、どうしてか引かれてしまいました、二宮君の話が長いのが悪いのに。まったくもう。 「それで、今週は何を話し合うのですか?」 「そんなに睨まないで、可愛い顔が台無しだよ」 「睨んでません、いつも通りです。……ん?つまり二宮君は私の顔がいつも台無しなグロテスクだとおっしゃりたいのですか?最悪です。傷付きました。謝罪を請求します」 「えぇ……、それは被害妄想が……」 「謝ってください。土下座してください」 「すみませんでし……土下座!?僕一応上司なんですけど!」 「セクハラで訴えますよ?」 「部下からのパワハラって訴えられるかな……」
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