第1章

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「予算はどうするのですか?ちゃんとあるのですか?私たちの給料が先々月滞っていましたよね?それなのに新人雇う余裕があるのですか?隠していた蓄えでもあるのですか?あるならどうして隠すのですか?それは私たちの生活よりも大事なものなのですか?」 「いや、あの……」 「あの、じゃわかりません」 「予算なんてありません。調子乗ってすみませんでした」 「オレも調子乗りすぎたっす……」 二人して私に頭を下げます。 「謝罪しろとは言っていないのですが」 「えぇ……」 「何か?」 「いや、なんでもありません」 二宮君が一度咳払いをし、会議は続きます。 「じゃあベートーベンとピアノは?何かない?」 二宮君がそう訊ねると、ピアノさんは音楽を奏でます。一通り終えると、今度はベートーベンさんの目が光ります。 ピアノさんとベートーベンさんは会話の仕方が特殊です。二人とも話を聞くことはできるのですが言葉は話せません。そのためピアノさんは伝えたいことを音に乗せて、それをベートーベンが理解します。 そしてピアノさんの伝えたいことを、ベートーベンが目を光らせて、モールス信号として二宮君に送ります。モールス信号は賢い二宮君だけが受け取ることができます。 「なるほどなるほど……。ピアノの意見は、照明を変えたらどうかと」 「逆転の発想っすね!真夜中なのに超明るい旧校舎とか不気味っす!」 「蛍光灯も全て切れてしまっているからな!この際LEDに変えてみるのもありだな!そしたらソーラーパネルも設置して、余った電力を売って予算も入る!完璧だ!」 「流石っす!最高にエコっす!」 「見込みは?」 私の声に再び二人の視線が集まります。また聞こえなかったのかしら。
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