第1章

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「黒字になる見込みはあるのですか?まさか私たちに死ぬほど働けとはおっしゃいませんよね?ソーラーパネルを設置して月々の電気料金が安くなったり、余剰電力を売ったりするメリットは確かにありますが元を取るまでに何年かかると思っているのですか?一般家庭でもおよそ十年ですよ?旧校舎全ての電気を付けっぱなしにするのに一体どれだけの電力が必要になるかご存知ですか?私たち妖怪がいるせいで普段から天気が悪いのに、まさか一般家庭水準で考えてはいませんよね?赤字のままじゃ本社にこの旧校舎を引き渡せないの知ってますよね?転勤もできなくなるのですよ?黒字になるまでずっとここで働かせるつもりですか?初期費用出す予算もない癖に」 「……勝手言ってすみませんでした」 「エコだからって調子乗りすぎたっす……。電気付けない方が圧倒的エコっす……」 二人ともまた頭を下げています。 「そんなに頭を下げるのがお好きなのですか?」 「えぇ……」 「何か?」 「なんでもございません」 二宮君が額に浮かぶ汗を拭うと、ピアノさんが一番低い音を鳴らします。 「なんて言ってるっすか?」 「ベートーベンに聞かなくてもわかる……。泣いてるよ、あいつ」 「悲愴っす!」 今度はベートーベンさんの目が光り続けます。 「ベートーベン先輩も泣いてるっすか!?」 「いや、あれは目を開けたまま寝てる」 「渋すぎっす!」 「二宮君、続きをお願いします」 「あっ、はい」 今一度、二宮君が咳払いをして話し合いに戻ります。 「えーと、来る前に十三段目に聞いてみたんだが、特に思い付かないとのこと」 「十三段目っちは優しいっすからね」 「僕としても弱点という弱点が見当たらなくてね……」 暫くの沈黙を疑問に思って、ノートから顔を挙げると三度私に視線が集まっていました。 「何か?」 「いや、花ちゃん何か思い付くかなぁって思ったりして」 「まぁ多少はあります。しかし、部下の私が先輩方を少し悪く言ってしまうのは心苦しいのですが……」 「今更っすね!」 「今更?」 妙な引っ掛かりを覚えてそちらを見ると慌てて縮こまっていました。すると二宮君が割って入ってきます。 「僕らの仲じゃん!多少のことはいいから遠慮なく言ってよ!」 「二宮君がそうおっしゃるなら……」 私は渋々了承し、息を大きく吸います。
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