500円玉

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「私も白亜という女性と恋仲になっていたのですが、別れてしまいました。貴方かもしれません。ですが、違うかもしれません」 「どうして、別れたのですか?」 「思い出せません。どうしても、無理なんです」  突然、ラウンジの窓ガラスが破壊されて、鬼が襲ってきた。  私たちは立ち上がり、血相変えて逃げ出す。  花の咲いたような空間を醸し出す照明に照らされたホテルの受付に、2メートルの大男の警備員が傘をさしていた。  雨は外では降っているが、室内はいたって降る様子はない。 「すいません。あなたが大熊と呼ばれる人ならば私たちを守ってください」 「5枚」  私はすぐに500円玉を5枚渡した。  大熊が鬼と戦っている際に、私たちは京急湯壺マリンパークへ向かった。  異様な道路は人がやはりまったくいない。  道路は起伏があり、至る所に美味しそうなキノコが生えていた。 「あの方は、25分鬼と戦ってくれます」  白亜が私に告げた。  私は急いでマリンパークに向かう。  途中。 「しっかりしてください」  との言葉が私の頭に響いた。  誰の声かは解らない。  緑色の大海原が見え、マリンパークに辿り着いた。  やはり、数分で辿り着く。  マリンパークという水族館にも、人がいなかった。正面玄関から中へと入ると、海の見える見晴らしのよいなめし皮の床を走る。両脇にはサメが泳ぐプールになっていて、そのプールで海水浴をしている女性がいた。  私は500円玉を10枚ポケットから取り出して、その青の水着姿の女性に渡す。 「OK。50分だね」  女性がそう言う最中、正面玄関から鬼が迫って来ていた。  女性は口笛を吹くと、プールのサメが目をギラつかせた。  私と白亜は女性が戦っている間。緑色の海の中へとザブンと入った。  魚も波もない海を泳いでいると、またあの声が頭に響いた。 「しっかりしてください」  私たちは必死に海を渡り、元の品川駅へと着いた。  やはり、数分しかからなかった。 「電車へ乗りましょう」  白亜は駅の改札口を私の手を取り走り抜けた。  誰もいないホームで待つと、駅員もいないので、運転手のいない無人で走る電車がやってきた。 「さあ、これでおしまいです。そして、始まりです。全部の500円玉を私に下さい。電車の中では効果が何万倍となるのです」  白亜に全部の500円玉を渡すと、白亜は誰もいない電車の中へと私を誘う。
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