【なくしたもの】

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自分では気づいていなかったけれど僕は心をなくした。 襲いかかる痛みも悲しみも避けることなく全てかぶるうちに 何も感じなくなってしまった。 はずだった。 10年間閉ざされていた僕の心は 君の涙によってほどなく溶かされた。 あれだけ溶かそうと躍起になっていたのが嘘みたいに。 僕を思って泣いてくれる人がいる。 僕の存在を認識し信じてくれる人がいる。 そんな思いが心に到達した時、 僕は10年ぶりに涙を流した。 やっと涙を流せたんだ。 長かった。でも、これでいいんだ。
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