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おそるおそる向けた視線の先には、溢れた血溜まりに沈む人間の頭があった。
どうしてだ?
さっきは確かに誰もいなかったのに。
そもそも、何でこんな所に人がいるんだ?
悲鳴だって聞こえなかったじゃないか。
だったらこれが幽霊なのか?
でも、どう見ても横たわっているのは生身の…さっきまで生身だった人間にしか見えない。
何がどうなってるいや何がどうであれ俺は後ろを見た何もいないのを確認しただから…。
血溜まりに伏せた頭が上がった。表情は血に染まって判らないが、ぎょろりと剥かけた目が俺を見ている。
その下で、木のうろのように見える口が開いた。
止まらなかったくせにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
絶叫を、耳ではなく頭の奥で聞いた瞬間、俺の意識は途切れた。
* * *
駅の近くに用事があって出かけた。
だけどあの駐車場を利用することはない。
そもそも、車自体にもう乗っていない。
あれ以来、どこに車を停めようとしても、脳の奥にあの声が響くようになった。ここ最近は、ギアをバックに入れただけで幻聴が聞こえて、もう運転などできる状態ではなくなってしまった。
身分証明書として免許は携帯しているけれど、車は近々売り払う予定だ。
もう、二度と運転はしない。後、もう一つ。バック中の車にも、俺は決して近づかない。
根拠はないが、なんとなく、絶対しない方がいいという予感がある。それに従って、今の俺は、車の背後は歩かないよう心がけた生活を送っている。
駐車場の怪異…完
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