大切な人

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会社を出た僕は、自宅近所の耳鼻科の病院を探して、さっそく診察を受けた。 まずは、耳の検査をすることになり「純音聴力検査」「語音聴力検査」「耳音響放射検査」「聴性脳幹反応」といった検査を受けた。 全ての検査を終えるのに1時間程度かかり、検査結果が出てから医師から説明を受けた。 医師の話では、病名は「滲出性中耳炎」ではないかと言われた。 滲出性中耳炎は、中耳腔と呼ばれる音の響きに関する場所に、本来空気が充満しているが、ここに空気の代わりに水がたまってしまう病気とのことだ。 水がたまる原因としては、「風邪」や「鼻のかみすぎ」から発症する場合があるが、僕の場合は、インフルエンザで高熱を出した際に発症したのではないかという話だった。 医師からは滲出性中耳炎の治療は困難で、完治は難しいと告げられた。 僕はショックのあまり、これからどうしたらいいのか考えることができず、頭の中が真っ白になった。 僕は、音の世界を失った。
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