序章(平和な異世界)

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この世界は力が全てだ。 理解していたはずなのに…。 俺の認識の甘さが家族や仲間を死に追いやってしまったのだろうか? もし俺が、死に物狂いで魔導を磨き、奴らに立ち向かっていれば両親や妹は死なずに済んだのだろうか? 全ては既に…手遅れだった。 見たことの無い種類の木々が生い茂る空気の澄んだ森の中。やりきれない後悔と絶望だけを胸に空を仰ぐ俺はただひたすら涙を流した。 泣きつかれて涙が渇れると、冷たい地面の上で死んだように眠りについた。 俺は長い悪夢にうなされた。 俺の大切なものをことごとく蹂躙する残虐な山賊どもの醜悪な面が脳裏に焼き付いて離れなかった。 世界には暗黙のルールがある。 自然の摂理と言っていいものだ。 強いものが弱いものを食い物にする。 弱肉強食がこの世界の理だった。 そんな世界の掟が嫌だったから俺たちは、父とともに何もない世界の片隅でひっそりと平和に暮らしていたというのに、辛い現実から目を背けていた報いだとでもいうのだろうか? 世の理から逃げ出した罰なのだろうか? こんな終わり方が俺達家族の運命だとでもいうのだろうか? もしも、これが決められた運命で俺だけが生き残ってしまった理由が存在するのだとしたら…俺は…。 「…父上、母上……エンテ………」 家族の仇は、必ず…俺が討つ! アレス=エレクシオンは木漏れ日の中で目覚めた。 それがこの世界の理だと言うのなら、絶対の力を手に入れて俺がこの世界の全てをねじ伏せる。 決して揺るがぬ誓いを胸に彼は生き抜くために行動を開始した。
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