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あれからベッドに横になるとすぐに寝てしまったようだ。
喉の渇きを覚え、ライトをつけて起きあがろうとしたが身体が動かない。
「え?」
自分を抱きしめる腕。その隣には何故かパンツ一枚の久世が気持ちよさそうに寝ている。
「な、なっ!?」
大きな声を出しそうになり、あわてて口を塞ぐ。
どうにか気持ちを落ち着かせ、まじまじと久世を眺める。意外と筋肉質な体で、腹筋も程よく割れている。
そう思えば、時間があるときはジムに行くと、以前言っていたことを思いだす。
「たく、のんきに寝てやがって」
と、ぼやきつつ。そっと手で割れ目を撫でる。
引き締まった身体はかなり好みだった。割れ目を撫でているうちに、もぞっと久世が身動きをする。
しまったと思った時にはもう遅かった。
「波多さん、くすぐったい、です」
と、ふにゃりと顔をゆるませ、撫でる手を掴まれてしまう。
「は、腹、割れてんなって思って……」
羨ましいなと、苦しまみれの言い訳を口にするが、じっと見つめるだけで何も言わない。
「ていうか、お前、なんでここで寝てんだよ」
ハウスとリビングの方を指さすが、ベッドから降りようとしない。
「あの、波多さんになら、俺、触られたっていいんですよ?」
「は、何を言って」
「寧ろ、どんどん触って欲しいです!」
甘えるように言われ、ごくとつばを飲み込む。この頃、縁がなくてベッドでこういう雰囲気になるのもご無沙汰だ。
期待するような顔で見つめられるが、彼女の姿がちらりと脳裏に浮かび、その手は肌を撫でるのではなくベッドから突き落とした。
「のわっ。乱暴だなぁ」
「てめぇなんて触りたくねぇよ。そういうことは彼女に言え!」
触りそうになった自分に対する怒りが、久世に対しての怒りに変わる。
「俺が、ゲイだから言っているのか!」
勢いあまって、思わず、言わなくてもいい事を口にしてしまう。
「え、波多さんって、ゲイなんですか?」
と驚いた顔をする久世に、血の気を失う。
よりによって何でばらしてしまったのだろうか。
だが、気持ち悪いと思って離れていくかもしれない。そうだ、そう望んでいたじゃないか。
「そうだよ、俺の恋愛対象は男なんだよ!」
開き直り、そう口にする。
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