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同僚たちには心配をかけてしまったなと、無視なんて子供じみた真似をしたことを反省する。
「何、食べます?」
「そうだなぁ……」
以前、女子達から得た情報を元に高級店の名前を上げていく。流石、高級店。うるさい久世も黙り込むほどだ。
何か考え込むように腕を組むが、
「いきましょう!」
それを解いて気合をいれるようにぐっと拳を握りしめると、ある高級店の名を告げる。
「本気か? 給料日はまだ先だぞ」
「波多さんが望むなら」
波多が望むからと後先考えなしなのは困る。
それに後々、あの日の食事がと、恨めしく思われたら嫌だ。
「冗談だし。全く、俺が望むからとか、やめてくれよ」
「何故です? 俺は本気で波多さんがそう望むなら、別にかまいませんよ」
久世の表情は真剣そのもので、波多は顔を向ける事ができずにうつむく。
そういう事を言わないでほしい。
高鳴る鼓動を落ち着かせようと息を深くはきすて、手を伸ばして久世の額にデコピンを食らわす。
「痛い、え、なんでですか」
「うるさい。ほら、ラーメン食いに行くぞ!」
と、リードのつもりでネクタイを掴み引っ張るが、
「わぁっ」
不意に互いの顔が近づいて。ネクタイから手を離す。
「行くぞッ」
思わず照れてしまった。それを見られたくなくて顔を背けて歩き出せば、その後を待ってくださいと久世が追いかけてきた。
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