年下ワンコとご主人様

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「うう、せつない……」  久世がそう呟いてテーブルに頬をつけ、波多を見上げる。  ここに会社の女子が居たら可愛いとチヤホヤされるだろうが、波多にはムカつくだけだ。 「お待たせいたしました……、えっと」  江藤がお盆を手に、困ったとばかりの表情を浮かべている。 「あ、すみません。ここに置いて下さい!」  それに気が付いた久世があわてて顔を上げてスペースをあけた。 「はい。カフェモカです」  たっぷりなクリームがのせられたカフェモカに、 「わぁ、クリームがいっぱい。嬉しいです」  とまるで女子のようにはしゃぐ久世だ。  そういえばと女子社員からお菓子を貰って喜んでいたっけなと思いだす。  長身でイケメンな甘党。しかもハイスペックで同僚にも好かれている。波多は久世よりも頭一つ分低く、そして平凡な顔達だ。仕事の面ではまだ辛うじて負けいていないというくらいだが。 「喜んで頂けて良かったです。では、失礼いたします」 「はい。ありがとうございます! では、頂きます」  見ているだけで胸やけのしそうな甘い飲み物を一口。 「んん、美味しい」  口元が緩み目がトロンと垂れる。 「今度は一緒に来ましょうね」  パンも気になりますと、ニッコリと笑う。  久世の言葉を無視し、波多はブラック珈琲を口にする。  頬が熱いのは、温かい珈琲のせいだ。膝をつきながら、そう自分に言い聞かせる。 「ほら、さっさと飲め」 「はぁい」  それでもゆっくりと飲む久世に、波多は自分が珈琲を飲み終わると席を立つ。 「ごちそうさまでした」  自分の分の伝票を手にし、会計に向かう。 「え、待って」  あわててカフェモカを飲み干し、伝票を手にする久世。それを放って外へ出た。 「波多さん!!」  店を飛び出し走ってくるが、波多は足を止める事無く歩き続ける。  途中でコンビニに寄らないといけない。久世は大飯食らいだ。昼を抜いたと女子社員が知ったらお菓子を手にまとわりついてきそうだし、上司や同僚からは、ちゃんと面倒を見てやれと言われてしまうだろう。  甘ったれなこの男は、周りにも好かれているのだ。
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