450人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものように甘えてくる彼に、
「そろそろ甘やかすのは終わりな」
仕事に慣れてきただろうと冷たく接する。まるで捨てられた子犬のように見つめてきたが無視だ。
「なんで、今まで優しくしてくれたのに」
いきなりの豹変した態度に戸惑う久世に、彼女がいる癖に、と、怒りさえ浮かんでくる。
それはただの八つ当たりに過ぎないが、その時は自分勝手な怒りを久世にぶつけていた。
「甘ったれたこと言ってるな! もう少しで研修も終わりなんだ。この先、そんなんじゃ困るだろ?」
これで自分の事を嫌いになってくれたらいい。
なのに、
「俺の事を思って、なんですね」
何を勘違いしたか目をキラキラとさせて解りましたと頷いた。
自分に都合の良い解釈をする久世に、流石に呆気にとられた。
「波多さん、良い人ですね」
大好きですと、余計に懐かれるようになってしまった。
何度、つれない態度をとってもめげることがない。
久世という男のしつこさにはウンザリとする。
そんな二人を、周りの同僚は「犬と飼い主だな」と言い、久世はその言葉を気にすることなくまとわりつくので、それが定着してしまったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!