年下ワンコとご主人様

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◇…◆…◇  小さな頃、親が離婚して母親に引き取られた。新しい父親と、二人の間に生まれた兄弟も出来た。だが、それと同時に自分の居場所がなくなった。  愛情を知らずに育った久世は、年上の、しかも甘えさせてくれる人が好きだ。  今の彼女はまるで母親のように、自分を甘やかして愛してくれる。  波多もまた自分を甘やかせてくれる先輩だった。  頭を撫でてくれるのも、久世の大好物はわけてくれる。喜ぶ姿を見て微笑む表情も、すご大好きだ。  なのに突然、人が変わったかのように、 「そろそろ甘やかすのは終わりな」  そう言われてしまい、仕事に慣れてきただろうと言われて突放された。  仕事の面でということなら解る。だが、何故、プライベートでも突放されたのだろう?  何か気に障る事をしてしまっただろうか。  理由を聞いても「何度も言わせるな」と面倒くさそうに言う。 「素の俺はこんなだから。研修の間は優しいふりをしていただけだ」  と、自分に優しさを期待するなら大間違いだとまで言われた。  それはすぐに嘘だと思った。優しさを期待するならと、そう口にして目をそらした。  結局、理由がわからないのなら付きまとう。  あまりに波多ばかり追い回すから、周りには「ご主人様と犬」のような扱いをされている。
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