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◇…◆…◇
久世は家族の愛情をあまりしらない。いつだったか、彼がそう話してくれた。
あまりに平然とした顔で言うものだから、波多はその日、久世をいっぱい甘やかしてやった。
「大丈夫ですよ。俺には甘えられる人が傍にいてくれますし」
波多の手をとり、ありがとうございますと頭を下げる。
その時見せた笑顔を思いだすと切なくなる。彼に必要とされたいと、そう思った時もある。
実際に必要とされていたのは自分ではなく、恋人の女性であり久世が帰る場所だ。それを失ってしまったしまったら、どうなってしまうのだろうか。
それがあるから、泊めて欲しいという彼の言葉を拒否することができなくなった。
なのに、久世は彼女と別れたというのにいつもと変わらない。それどころか波多の家に行くことを楽しみにしているようにも見える。
泣いているかと、心配した自分がばかみたいだ。
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