第1章

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「素振り、やめ」  主将の言葉にみな竹刀を下ろし、壁に沿ってずらりと座る。勝ち抜き戦が始まるのだ。一本勝負で対戦し勝った方が残って次の挑戦者と戦う。  勝ち抜き戦では疲労の要素もある。普通なら強い人でも疲れがたまったために敗北し、勝ち残り者が変わったりするのだが、うちの部の場合、様子が違う。  強い順に参加していくので、最初に主将が登場する。そして主将がひたすら勝ち続け、部員全員を打ちのめして終りという残念な状況が長く続いているのだ。  防具を着けた主将が試合場に立った。対戦相手は副将の真田さんだ。 「はじめ」  顧問の先生の号令で始まった試合は、打ち込んで行った真田さんが逆に面を取られてあっさり終わった。 「次」  よく通る主将の声に次の新見先輩が立ち上がった。  飛び込んで行っての抜き胴や、相手の竹刀を弾き飛ばしての面打ちなど、主将は相手を次々と破って行った。縦横無尽に動く主将の周りに竹刀が美しい軌跡を描く。
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