第1章

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 バンッ  主将の竹刀の横をすり抜け、俺の面が入った。だが浅い。  素早く下がって間合いを取る。やはり顧問の旗は上がっていなかった。構え直して主将を見る。横金の向こうで目が大きく見開かれていた。だが、すぐに冷徹な目付きに戻る。主将も中段に構え直した。  いける、俺は手ごたえを感じていた。さっきは踏み込みが浅かったが、もう一歩踏み込めば……、改めて主将の呼吸の流れに意識を向けた。流れを捉えながらタイミングを測る。  陽炎が前帯のあたりで大きさを増し、ゆっくりと上へ昇って行く。それは胴から胸に上がり……、そこで止まった。胸のあたりで揺らめき続ける。  どういうことだ、俺は訳がわからず視線を詩苑主将に向けた。そして、彼女の顔が徐々に紅潮していくのに気がつく。その唇は真一文字に引き締められていた。そう、主将は息を止めている。俺が呼吸の流れを読んでいるのに気付き、対抗策をとっているのだ。だが、息を止めたままで戦えるものなのか。
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