消えた家宝

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   結局、昨夜はそのまま自室へと引き返した麗子は眠れぬ夜を過ごし……そのまま朝を迎えた。    どうして、お父様は家宝の事を伏せていたのだろうか……  ……家宝の事を恐れていたから?  ……何故そこまで恐れる理由が……  ……何かまだ知らない事があるのだろうか……    ……そもそも家宝はどんな物なのか……  ……何故今になってお父様は金庫を開けたのだろうか…… ……そして、金庫に入れて置いた家宝が消えたという事は、泥棒又は考えたくないけれどこの屋敷にいる誰かが勝手に持ち出したという事になる……    ……しかし、一体誰がこんな事を………  麗子の頭の中では止まない疑問が次から次へと浮かんでいた。    ……コン、コン、コン  ドアを三度ノックする音が部屋中に響く。  その音を聞いて我に返った麗子は一旦考える事をやめた。    「御嬢様、御早うございます。    御朝食の支度が整いましたがいかがなされますか?」  「……悪いけど要らないわ。    今朝は体調が思わしくないのよ。    今日は女学校も休校だから、お昼まで部屋で休んでいるわ。    お父様にもそうお伝えしておいてくださるかしら」  「かしこまりました。    ……御嬢様、本当にお体が優れないようでしたら御医者様をお呼びしますので。    何かございましたら何なりと御申しつけください」    「分かったわ。    ありがとう、牧田。    でもすぐに良くなると思うから心配は無用よ」    「……承知しました。    では、ごゆるりと御休みくださいますよう」
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