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普段から、あらゆる社交界に招かれている一男は夜までは屋敷を空ける事が多い。
それ故、牧田を始めとする女中達にさえ見つからなければ怪しまれずに行動に移す事が可能である。
今までに幾度と無く家宝探しの機会は巡って来ていた。
だが、ついこの間までは一男が雇った探偵に毎回妨害されていたので、探偵が去った今、漸(ようや)く動き出せた麗子だった。
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日射しが照りつく八月二日。
この日は麗子の誕生日であるが、三千子の十四回忌でもあった。
麗子は今尚、素直に自分の誕生日を喜べないでいた。
そんな麗子を察した一男はある時から
「誕生日おめでとう」
と言うのを止め、
「産まれてきてくれてありがとう」
と言うようになった。
また、他の者にも祝い言葉を禁止させ、その代わりに麗子には感謝の意を伝えるように促していた。
三千子の十四回忌式典は毎年著名人が大勢集まり、三千子が眠る山の上の別荘で行われた。
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