消えた家宝

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   時は遡(さかのぼ)る事、大正の世。  季節は春から夏へと移ろい始めの頃……。    名門芸術女学校に通う、新沼 麗子(にいぬま れいこ)は、ハイカラさんとも呼ばれ、母親に生き写しのような色白の美人だったが、病弱体質までもが母親譲りだった。    麗子はこの町では三本の指に入る名家、新沼 一男(にいぬま かずお)伯爵の一人娘であり、令嬢。    麗子の母の新沼 三千子(にいぬま みちこ)は、麗子同様の清楚な美人で社交界の華だったが元々病弱体質なのもあり、麗子を産んで間もなくこの世を去った。    母親の面影を残しつつ、野心家な父親にも似た麗子。  時にはその性格が災いし、女中の牧田(まきた)を困らせたりもしたが、それでも皆に愛されて育った麗子は、何不自由なく暮らしてきた。      だが、あの晩……    父親の話を偶然盗み聞きしてしまい、初めて家宝の存在を知る事になるまでは…………。
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