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「麗子御嬢様、お帰りなさいませ~」
帰宅した麗子を屋敷の玄関先で、女中達が出迎える。
その中でも麗子が産まれた時から麗子の世話役を引き受け長年、新沼邸に仕える牧田が麗子から画材道具一式を受け取ると、中へ通しながら声をかけた。
「御嬢様、今日も勉学に勤(いそ)しまれたようですね。
さぞ、お疲れの事でしょう。
ごゆるりとお休み下さい。
今晩の御夜食の方はいかがなさいましょう?」
「ええ。私は大丈夫よ、牧田。
そうねぇ……
今晩も彼処(あそこ)で頂く事にするわ」
正面玄関を入り、直ぐにある階段を上がり、左奥から二部屋目にある自室に辿(たど)り着いた麗子は牧田に返事をするとベッドに横になった。
母親譲りの病弱さ故、麗子は女学校から帰宅すると、夜食までの間の殆どを自室で過ごし、休息を摂っていた。
返事を受けた牧田は、麗子の様子を確認すると一礼し、部屋を後にする。
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