消えた家宝

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   一通り食べ終えた麗子は、呼び鈴を鳴らして女中を呼ぶ。  「御馳走様。下げてちょうだい」  「はい、かしこまりました……御嬢様」  「ねえ、ちょっと……    シェフにこう伝えておいてくださると嬉しいわ!    今晩もとっても美味しいライスカレーをありがとうって……」  「はい、承知致しました」  呼び鈴を鳴らしてから、直ぐにやって来た一人の若い女中に、麗子が託(ことづ)け頼むと食器を片付けて出て行った。  夜食を済ませた麗子は、丸テーブルの上に画材道具を置くと中庭に咲く花々をスケッチし始めた。  女学校で絵を習っている麗子は、絵を描いていると時間が経つのを忘れるくらい没頭する。  しかし、病弱さ故にいつ倒れてもおかしくない為、あまり夢中にならないようにと、かかりつけの医者に忠告を受けていた。  そんな訳あって、絵を描けるのは女学校と……屋敷では夜食を済ませてから、父親が帰宅する迄の三十分だけと医者との間で決めていた。  八時になり、父親の一男が帰宅したと知らせに来た牧田。  「あら、もうそんな時間なのね。    早いわね……分かったわ、牧田。    …………今行くわ」  
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