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まだ描いていたかった麗子だが、渋々片付けを始めた。
「本当に絵がお好きなのですね、御嬢様は。
そう言えば、御嬢様が未だ五つくらいの時に似顔絵を描いていただいた事があって、今でも大切に取って置いてあるんですよ」
「嫌だわ、牧田。そんな昔の粗末な絵を未だ取って置いてあるなんて」
「いいえ、御嬢様。
御嬢様から始めていただいた似顔絵、牧田はとても嬉しゅうございました」
「ありがとう。
もし良ければまた牧田の似顔絵描かせてもらうわよ。
五つの頃よりは大分上達してると思うわ。ふふふ」
「左様でございますか?
それはそれは嬉しゅうございます。
では是非、御嬢様のデッサンの練習台にでもさせていただきましょう」
「ふふ。楽しみね」
画材道具を牧田が受け取ると、二人は中庭を後にした。
真っ赤な絨毯が敷いてある長い通路には、父親が趣味で集めている高価な壺や有名画家の絵画が飾られている。
子供の頃から、こういった父親が集めた芸術コレクションに身近に触れ合えた麗子は、自然と芸術に親しむきっかけが創られて行ったのだろう。
「では、御嬢様……画材道具は御部屋の方に御運びしときますので」
「ええ、頼むわ」
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