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4.
その頃、椎名杏梨はとあるカフェテリアに来ていた。
『エリア:第3区』にある小さな喫茶店、『セイレーン』。
その喫茶店には杏梨だけではなく千絵達も来ていた。
今回、ここに来た理由は、明日の為のテストの予習を皆でやろうという事で、杏梨達が通う学校の少し離れた所にあるこの喫茶店に来ていた。
明日行われるテストは『英語』。
幸い明日行われるテストは一教科のみ。
その教科に集中して予習と復習ができる。
それにこの教科は杏梨にとって得意な教科。
杏梨「あっ奈月さん。そこのスペルちょっと違うよ」
「あっあれ?本当だ」
杏梨の隣に腰掛けている少女は、ノートに書かれてある間違った単語を消しゴムで消し始める。
花飾りのペンダントを付けた少女、"奈月ゆか"(なつきゆか)は杏梨と一緒にテスト勉強に取り組んでいた。
勿論、"殿谷鹿之助"(とのやしかのすけ)、"赤嶺駆"(あかみねかける)も一緒にテスト勉強に取り組んでいた。
その時、カウンターからこの店のオーナーがやって来た。
「あらぁ~。ちゃんと頑張ってるわねぇ~」
女言葉で喋っているが、このオーナーは男性である。
背が高く分厚い体つき。大きな口には口紅を塗っており、そんな不思議なマッチョな彼は、この店のオーナー"ヒロミ"ちゃん。
勿論、この名は店の中だけの名前。
すなわち偽名である。
杏梨「すみません。忙しい時にこの店を占領しちゃったみたいな感じになって」
ヒロミ「いいのよぉ、みんなテスト頑張ってるんでしょお?」
杏梨は申し訳なさそうに頭を下げるがそれに対してヒロミちゃんと名乗る男性は軽口にそう告げた。
ヒロミ「それに、駆ちゃんとゆかちゃんのお友達だったら尚更よぉ」
駆「ごめんねオーナー。今日は勝手にこの店を勉強室の様に使っちゃって」
ヒロミ「駆ちゃんも何言ってるのよぉ。ここはあなたの『お家』でもあるんだからぁ」
そう、この店は駆が下宿している家でもある。
本来ならこの店でオーナーの手伝いをしているのだが、中間テストの為に今日は休みをもらっている。
千絵「そう言えば、いまここで『あの子』も下宿するようになったのよね?」
ヒロミちゃんに出されたミルクコーヒーを一口飲みながら千絵は店内をキョロキョロと誰かを捜すかの様に見渡し始める。
ヒロミ「あら?『あの子』ならちょっと買い出しを頼んだのよ。もうそろそろ戻って来ると思うけど」
「________________ただいま戻りました!」
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