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エピソード1
かえでの状態を心配しながら家に戻ってきた深山博人は、ベッドの上で今は落ち着いている妹の様子に、ホッと安堵の息をつく。
部屋のすみには、ずっとついていてくれたのか、中年の女性、雨本みどりと、その息子の高史が、心配そうにこちらを見つめている。
雨本親子とは初対面だが、高史のことだけは、かえでの口から噂話を聞いている。
かえでが通っている高校の近くに住んでいる、生意気で可愛らしい少年だ。
『そうか、この子が……』
どうやらかえでのナイト(騎士)気取りでいるらしい。
そんな話を聞くにつれ、いつか顔を見ておかなくてならないと思っていたが、図らずもその目的は果たせたことになる。
「連絡をくださって、ありがとうございます。かえでもどうやら落ち着いたみたいです」
博人は礼を言って頭を下げる。
下げたついでに、背の低い高史の顔をまじまじと眺めると、臆す様子もなくギロリと目を剥いてきた。
『なるほど、生意気だ』
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