第1章

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「参ったなあ…」 僕は頭を抱えていた。 20××年。世界に謎のウィルスが蔓延し、死体が動き出した世界。 さすがに噛まれたらゾンビになる!みたいなエクストリーム増やし鬼なシステムはないものの、見ていて気持ちのいいものではない。 僕もそう思っていた。 自分が死んで、ゾンビになるまでは。 あの日は新婚二ヶ月。毎日がウキウキで、妻の手料理を楽しみに帰る交差点、トラックに轢かれて。 で、気がついたら山奥。 おいこら、運転手。 病院つれてけや。轢き逃げだぞ。 左腕が変な方向に曲がっていたが全く痛くなかった。 その時、自分が死んでゾンビになったことに気付いた。 おいこら、過失致死と死体遺棄もプラスされたぞ、運転手。 帰ろうにも、山奥だ。 スマホは画面がバキバキに割れてるどころか二つ折りになってた。 見た目ガラケーだ。わーい。 で、どうしよう。全く知らんぞ、ここ。 とにかく、山から下りなきゃ。 よたよたと歩く。 足も折れてはいないが、ボロボロだ。 そんな状態で何時間も歩き、諦めた。 方角わからん。 山ですらないかも。樹海かも。 木に寄りかかり、溜め息をついた。 で、寝た。 翌日以降、一念発起して歩く歩く。が、全く出口にたどり着かず。 その間に体がちょっとずつ腐っていく。 で、何日たったかわからん今現在、頭を抱えている理由。 聞いて驚くな。左腕無くした。 痛みとかないから気づかなかった。 ふと見たら無くなってた。 結婚指環付き。 いやいやいやいや。マジか。 大事なもんだぞ。指環。 左腕はもう使えないかもしれんけど。 どこだ? どこやった? もと来たとおぼしき道をよたよた歩く。 あー。無い。 最悪。 暗くなって来たし。 夜目効かないんだよなー。
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