第1章

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「ひっく、ひいっく……」  歯を食いしばっても、圧迫されて息を出される。体の中に巨大なものが、存在しているようであった。いいや、頭の中が、一点の感覚で占められている。  頭の中が、響紀の動きだけを追っている。  俺の体は、響紀を満足させられているのか、変な不安がよぎり、響紀を見ようとする。シェリエは、慣れない体、相手を満足させられなかったらと不安になる。 「大丈夫、大和、やっと全部、収まりましたよ」  えええ、今?俺は、もう限界であった。 「ごめん、もうムリ……」 「あ、のぼせたか。ここ熱かったからね」  続きはベッドでと、運ばれてしまった。  鬼城に戻ると、すぐに本部に呼び出されていた。雪家の保護と、観測所の警護と整備は継続中、問題はないはずであった。  一緒に来ていた、時季と響紀も、鬼城の個室で待機のままになっていた。  案内人が、俺を大広間に通していた。大広間には、中央部分に布団が敷かれていた。 「一羅?様」 「はい、そうなのですが……」  近寄ろうとすると、止められる。 「近寄る者を、亜空間に飛ばしてしまうのです。すでに五名ほど、行方不明になりました」  医者も亜空間に飛ばされたらしい。  何故、大広間に眠っているのか。そういえば、俺も、亜空間から大広間に出たような。この場所が、亜空間に繋がり易いのではないのか。  亜空間を分析してみると。一羅はこの空間にいなかった。無意識なのか、亜空間に体を飛ばし、余命を繋いでいるようであった。  亜空間とこの空間との境目を、赤く光らせてみた。 「一羅様、仕事を終えて戻りました!」  俺が歩き出すと、案内人が腕を掴んで止める。 「大丈夫、今、赤く光っている場所から亜空間です」  俺が、ギリギリまで一羅に近寄ってみたが、起きる気配がなかった。生きているのか確認したくても、脈さえもとれない。呼吸をしているのか確認してみたが、息をしている様子もない。  一羅は自分の死を隠したのか。 「一羅様、俺、腹が減ったのでウナギを食べてきます。あの店の日本酒、うまいですよね。特注の仕込みなのだそうですよ」  一羅の指が僅かに動いた。これは、聞こえてはいる。 「空間を隔離、遮断する」  要は人払いをかける。 「一羅、蘇りの菌を五羅の亜空間に渡している。これを餌に、孝太郎を亜空間から出そうと思う」  しかし、孝太郎は強かった。特に、亜空間使いにかけては、天才であった。
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