24人が本棚に入れています
本棚に追加
それも、血の量からすると、相当深い。このままでは、火威のほうが、先に死ぬのではないか。
誰かいないのか、通信機を見ると、まず日付を確認してしまった。たったあれだけの時間であったのに、三週間が経過していた。
「……時季」
小声で呼びかけると、すぐに応答があった。
「大和、どこですか?」
ここは、どこであろうか。どこというよりも、何の間であろうか。廊下に出てみると、通りすがりの人が叫び声をあげていた。
「大和!がいます!」
俺は、知らない内に犯罪者にでもなっているのだろうか。見る人の全てが、叫んでいた。
「大和!」
聞きなれた声の主を探すと、長い廊下の先に響紀の姿を見つけた。
「響紀?」
響紀が走ってくると、俺に抱き着いて泣いていた。
「大和……良かった……」
俺は響紀を、力を込めて離す。
「それどころではなくて、医者!」
「怪我でもしましたか?病気ですか?」
響紀が、慌てて俺のあちこちを見て確認していた。
「俺ではなくて、火威さんだ」
「火威様?」
響紀が、俺に案内されるがままに広間に入り、倒れている火威を確認した。
「救急班を頼む!緊急だ!」
俄かに周囲が賑やかになると、沢山の人が集まってきた。
「緊急搬送」
やはり、傷は深かったか。応急手当はしてあったようだが、長くはもたない。だから、五羅が俺に託したのかもしれない。戦闘のまま、亜空間を抜けていたら、火威は死亡していただろう。
「大和、三週間。消えていましたよ」
響紀が、火威の搬送を終えると、俺の正面に立った。
「亜空間に飲まれた。五羅の元に行っていたよ。二時間くらいだったかな」
「龍造寺から、大和が一羅様に触れた瞬間に消えたと聞いた時には、絶望しましたよ。でも、絶望よりも、助けなくてはいけないと、心吾を待機させていました」
心吾は、どこにいるのだろうか。礼を言わなくて名いけない。
「心吾は?」
「向こうの部屋で倒れています。心配はいりません、疲労と緊張が原因です。休めば治ります」
三週間、一羅も目を覚ましていなかった。
「時季は?」
「雪家の仕事をしていますよ。でも、ソニアでの離着陸は難しいので、中型機で支援しています」
時季にも無理をさせてしまった。俺は、一羅の容態を見ると、心吾の元に歩いてみた。
心吾は、控室のような狭い部屋のソファで、うつ伏せの状態で眠っていた。
「心吾。助かったよ。ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!